現在

 いろいろと自分の中の気持ちのモヤモヤを解決しようとはしていましたが、当時はなかなか情報も手に入らなかったので、大学を卒業した、21世紀最初の頃の時点でもまだ、はっきりとしたゲイという自覚がありませんでした。それで、なんとなく、地方を拠点とする大学の医局に入ってしまったのですが、今後の自分の幸せを追求していくと、生活の拠点を都会、できれば東京におくべきなのかも知れないな、と思っています。せっかく外科医になったので、この世界で一人前になりたいという思いももちろんありますが。バランスの取り方が難しいです。異性愛者であれば、職場が変わるたびに新しい出会いもあるわけで、病院に張り付いていながらも、その地域の中で幸せな生活基盤を築けると思います。同性愛者の場合、自然な生活の中で、同性愛者の友人や恋人を見つけるのは至難の業です。出会い系サイトだとか、オフ会といったツールは、同性愛者のようなマイノリティにとっては、しばしば唯一の出会いの方法です。仮に身近に同性愛者がいたとしても、隠して生活していることが多いから、なかなか出会えませんし。

 結婚して、家庭を持つということは多分しません。また、普通に生活しているだけでは恋愛はかないません。マイノリティですから、人の繋がりを求めるとき、田舎ってのは不利です。マイノリティにとって、価値観の多様性が存在しなくなることの多い田舎社会は苦痛であることも多いのです。僕らにとっては、絶対人口が多く、価値の多様性がうまれる都会と、多様な情報が必要です。インターネットの普及は、マイノリティにとって一つの救いでもありました。

 まあ、とりあえず、「ゲイであるかどうか」ということについて悩む時期はとっくに終わっています。今は、ゲイであるために不都合なことについて悩んでいるだけの話です。幸いにも、周囲の人間に、カミングアウトして良い関係を築けましたし、ゲイの友人をつくっていくこともできました。ただ、職場と家族にはまだオープンにしていません。本当は、堂々としていればいいのでしょうけれど、個人的な考えとして、少なくとも現時点では、やたらとカミングアウトすることが正しいとも思いません。おいおい、そういうことについても書くかも知れません。