現在までのカミングアウト

 また、しばらく間が空いてしまいました。話の流れとしては、
http://d.hatena.ne.jp/deltoideus/20060120#p1
の続きです。メルマガのバックナンバーが一番時系列がわかりやすいかも知れません。
http://blog.mag2.com/m/log/0000175084

 さて、今までカミングアウトの話を続けてきました。ネット上で知り合いがゲイだということを知り、その彼にカミングアウトしたのを皮切りに、共通の知り合いを中心にカミングアウトをすすめて行きました。まずは、僕が今でも少なからず好意を抱いているノンケ(異性愛者)の友人に、続いて、恋愛感情は抱いていないものの、そのことがかえって貴重な存在でもある、大切な友人に。

 前回書くのをすっかり忘れていましたが、3人目の相手(ノンケとしては2人目)にカミングアウトをする際に、1人目の相手がゲイだという話題を持ち出してしまったのです。そのゲイの友人は、既に多くの共通の友人にカミングアウトをすすめていたし、僕が3人目にカミングアウトした相手は、僕がゲイだということに気付いているのではないか、という話をしていたこともあって、当然、1人目の相手がゲイであることを知っているとばかり思っていたのです。結局、僕は3人目の相手に、勝手にもうひとつのカミングアウトをしてしまったことになってしまったのです。その日のうちに電話で平謝りしたのですが、ゲイの彼は「まあ、彼にはいずれ話すつもりだったし、いいですよ」と許してくれました。その後のカミングアウトには慎重を期したことはいうまでもありませんが、いまだに、僕がカミングアウトした友人と、彼がカミングアウトした友人というのが完全に一致していないのです。交友関係は、結構かぶっているところがあるのですが、お互いにとって、カミングアウトするべき人間が違うのだから、それは当然と言えば当然なんですが。過去何度も書いているように、無尽蔵にカミングアウトするつもりは、僕も彼も今のところないのです。

 4人目のカミングアウトの対象も、後日訊いたところによると、ゲイの彼はカミングアウトしていない相手みたいです。もう、カミングアウトするつもり満々で、あるバーへ呑みに出かけたのですが、そこにカミングアウトは想定していない知人のカップルが先客でいたので、普通に呑んだあと、電話でやりとりすることになったのです。勇気がなくなりそうだったので、帰る時点で、「大事な話があったのだけれど、あの環境では話せなかったので、電話で今日のうちに話したい」と宣言し、自らを逃げられないようにしておきました。それで、帰宅したあと、布団にくるまって長電話し、延々関係ない話をしたり、前置きを長々と語ったり、沈黙を挟んだりしながら、「唐突なんだけど、僕、ゲイなんだよね。これを隠したままつきあっていくのが相当辛いので。告白は自己満足なのかも知れないけれど」というようなことを一気に言ったのです。ノンケに対しては、この3人目にしてはじめて、自分の口から、はっきりと自分が「ゲイ」だと言ったのです。彼は、既にゲイの知り合いがいたというようなことを少し話したあと、「まあ、今回の話よりは、delさんが本を出したという話を聞いたときのほうがびっくりしましたよ」と言われました。この話のずれ具合が、なんだか暖かくて、すごくほっとして、嬉しかったのを覚えています。ノンケ1人目の相手は、どちらかというと、ゲイの社会のことについて興味を持っていろいろきいてきたりしましたが、この時の彼は、カミングアウトの時の返事ほぼそのままの関係が続いています。僕と彼との関係には、僕がゲイであることはほぼ関係のないことだったのでしょう。これもひとつの良好な形だと思います。変化といえば、自分の持っているノンケ向けエロDVDの話題などを振ってこなくなったということくらいでしょうか。今でも仲良くさせてもらっています。ちなみに、本というのはあまり気にしないでください。一応著作があるのです、僕。

 このあたりで相当勢いづいていて、僕は「カミングアウトブーム」の大波の中に身を投じます。家に趣味で細々とやっているバンドメンバーを招いて、2人に同時にカミングアウトしたときは、リアクションは相当薄かったのですが、後日訊くところによると、あまりの衝撃にリアクションがとれなかったとのことでした。彼らも、同性愛自体の話題にはそれほどつっこんできませんが、僕がカミングアウトも含め、いろんな弱みなどもみせることにより、彼らは彼らの悩みを語ってくれるような機会も増えました。それまでは、彼らが僕よりかなり年下ということもあり、それなりの壁のようなものもあったのですが、カミングアウト以降、どんどん距離が近くなっている気がします。当時彼らは他学部の大学院生だったのですが、院を卒業し、就職、住む場所がバラバラになってなお、たまにライブを演っています。その他に数人のバンドメンバーがいますが、一人をのぞいて全てカミングアウトがすんでいます。最後の一人は、してもいいんですけれど、別にしなくてもいいような。その理由はうまく説明できないんですけれど。

 その他、既にカミングアウトしてある友人から「話がめんどくさいから」別の友人にもカミングアウトしちゃえば、と言われてその通りにしてしまったり。別にカミングアウトするつもりはなかったのに、呑んでいるうちに内面をいろいろ語り出して、結局カミングアウトしたり。そうすると、そうやって新たにカミングアウトした相手に関係の深い相手、例えば恋人などにもするとか、嵐のようにカミングアウトが進みました。ブームに乗っかって、それほど接点のない相手にもカミングアウトしまくった時期です。幸いなことに、今までにカミングアウトによって関係が悪化したことはありません。カミングアウト相手が、全ての感情を感想として語ってはいないと思います。社会にあまりおおっぴらにゲイというマイノリティーが存在せず、「異常」であると刷り込まれているような現状ですから、負の感情を抱くことも別に悪いことではなく、自然なことだと思います。

 ネット上で「親友にカミングアウトを受けたものの、それに嫌悪感のようなものを抱いてしまう自分に悩んでしまう」というような状況を綴った物がありました。
http://d.hatena.ne.jp/deltoideus/20051126#p1
 以前も書いたように、カミングアウトというのが、理解を求めるもの、と考えてしまうと、お互いに辛くなってしまうと思います。これは、別に同性愛という性的指向に限った話ではなくて、相手のことを真の意味で「理解」するのは非常に難しいことだと思うからです。だから「理解が足りない」ことを苦にすることはないと思うし、それは「若干の差別者」とは限らないと思うんです。僕個人的には、カミングアウトを受けてなお、「大切な友達」だと思っているという、その感情で必要十分だと思います。これも僕の個人的見解ですが、受け入れろ、理解しろ、っていう思いよりも、自分を偽りたくない、嘘をつかないで話したいという思いが強いと思うし、なにか重いものを相手に押しつけるようなこともしたくないのです。