医局に身をおくということ

 全てを得ることはできないのだから、優先順位をつけて、自分の大切なものから選んでいくしかないということは、頭では分かっているのに、なかなか思い切った行動ができないのです。
 今、地方の大学の医局に身をおいていますが、身につけたい技術や、目指していく方向としては、今の身分に強い不満はないのです。もちろん、無給での労働、やたらと多い当直など、勤務体制には不満はあるのですけれど、これは、全国どこへ行ってもあまり解決にならないので。
 ゲイという少数派として生きていく上で、住む場所というのは大きなファクターです。ただ、もちろん、地方にいると絶対にゲイとの出会いがないとか、そういうことはありません。ただ、数の問題として、やはり都会は有利です。
 先日、都内で働くゲイの医者と話す機会がありました。彼は、大学には属していません。大学医局への入局が一般的だった旧制度時代に、彼は大学には属さないという選択をしました。結果として、彼の選んだ研修病院は魅力的だったようですし、また、彼にとって東京に住むというのは重要な点だったとのことです。彼は、最初の研修先にさらに残って研修をつづける道を選択しました。もちろん、その後スタッフとして採用される補償はありませんので、そういう点では、僕は医局という安定した場所にしがみついているのです。
 もし、僕が東京に住むことを第一とするのであれば、道はいくらでもあるのでしょう。だけど、常日頃から、僕は東京への憧れを言いながら、地方の大学にしがみついているのです。
 ここ最近、僕の事情を知る人の多くから「根拠はないけれど、医局なんて辞めて、東京に出てしまうのがいいと思う」なんて言われるのです。また、自分の追い求めている外科医療へのモチベーションが、昨今の過剰な医療バッシングによってゆらぐようなこともあり、真剣に退局のビジョンを考えたりもしているのです。
 とりあえずは、大学院というところにまでやってきてしまったので、学位だけはとろうと思います。その時点を区切りにして、飛び出すことも考えます。そこで飛び出さなかったら、なんとなくずっと大学にしがみついてしまうかも知れません。大学の人事の中で、東京に近い場所に長く置いてもらえるのが理想なのですが。
 ちょっともやもやと考えていることです。
 メルマガも相当滞っていますが、少なくとも春のうちには出すつもりです。気長にお待ち頂けると嬉しいです。