第6回東京プライドパレード

http://parade.tokyo-pride.org/6th/index.shtml
 去る8月11日(土)、第6回東京プライドパレードが行われました。これは、昨年までは「東京レズビアンゲイパレード(TLGP)」と呼ばれていたものです。性的少数者が社会へ存在をアピールし、差別や偏見をなくそうと呼びかけるもので、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)や、その理解者たちによって担われてきました。
 昨年までの名称では、LGBTのうち、「レズビアン」および「ゲイ」のみが掲げられていることになり、それを疑問視する声が前々からあったようで、今回からは、世界的にも広く使われている「プライド」の呼称を用いることにしたようです。
http://d.hatena.ne.jp/deltoideus/20070303#p1
 以前書いたように、僕の中には、ゲイのムラ社会の中にひっそりと身をおいていることを良しとしている部分もあります。実際、完全な孤独の状態から脱した時、同じような性的指向者のムラ社会的コミュニティーに浸かるというのは、それまで常に外界に気を使って生きていることの多い性的少数者にとって、非常に心地よい部分もあるのです。また、ゲイであることを恥じることでは無いと思っていながらも、それを公にすることが必ずしも正しいということでも無いと思っている部分もあるのです。
 実のところ、LGBTという括りも非常に大雑把なものであって、ゲイにはゲイの、トランスジェンダーにはトランスジェンダーの独特の悩みが存在すると思います。また、一口にゲイといっても、その思想も様々ですし、皆が必ずしも同じ方向を向いているわけではありません。
 LGBTであることを公にすべきだとか、隠していたいとか、そんなことに悩まなくて良い社会、パレードなんて行わなくても、LGBTの存在を受け入れてくれる社会というのが理想であることは言うまでもありません。
 個人的に、現時点で、日本のプライドパレードは、アピールするというよりは、単に性的少数派同士が「群れ集まる」という部分や、LGBT自身が肯定のシャワーを浴びるためのお祭りという要素が大きいように感じています。ただ、僕は、とりあえずはそういう場でいいのではないかと思っています。
 おそらく、LGBTがもっと社会に声をあげるべきだという「LGBTの権利推進派」にとっては、単なるお祭り騒ぎのパレードとして歯がゆい部分があるかも知れないし、ただ単に、自分を否定されない場にひっそりと加わりたいと考える人間にとっては、思想や政治の色がみえることに拒否感を示すかも知れません。
 個人的な感想ですが、概して日本人は、LGBTに限らず、思想・思考、政治、宗教といったことに拒否感を示し、自分の考えをはっきりと示すということが不得手な人が少なくないというイメージがあります。僕にとっては、パレードはまず、仲間に出会えていなかったり、社会から「肯定」されるという体験をしていなかったりするLGBTが、肯定のシャワーを、祝福を浴びる場であって欲しいと思うのです。みんながみんな、確たる指命や思想を持って、社会に働きかけるということでなくても構わないと思っているのです。繰り返しになりますが、無論、最終的には、自然とLGBTが受け入れられる社会であり、パレードなんて行わなくてよい社会なのだとは思うのですけれど。
 東京プライドパレードは、今年、大きな変革の年であったようです。組織作りの過程や、政治との関わり、あるいは前述したような、パレードへの様々な意識の違いなどから、東京プライドという組織や、あるいはパレードという行事そのものに批判の声があることは知っています。
 無責任な立場から感想を言えば、まあ、そういったことは仕方が無いとも思います。今年は、様々な政治家の参加があったり、直前に国政選挙があったりしたことで、政治の匂いを感じさせたことは確かです。LGBTだから、あるいはその理解者だから無批判に政党や政治家を支持するものではありませんし、僕自身、パレードに関わった政治家たちを全て支持しているわけでもありません。
 また、そもそもプライドパレードが、唯一絶対のLGBTを代表するアピールであるとも思いません。ただ、数少ないLGBTが、LGBT同士で無駄にいがみ合ったりするのも賢明ではないとも思っています。多様性を一般社会に受け入れてもらおうと思うのであれば、LGBT同士が、その多様性を尊重しあい、仲良くすることができたらいいなと思っています。
 僕は、パレードには一昨年初めて一般参加し、昨年からはボランティアスタッフとして参加させてもらっています。組織作りや、下準備、折衝などの一番大変な部分には関わっていませんので、東京プライド理事や、パレード実行委員のみなさんにしかわからない苦労があると思います。そうした方々にとっては、非常に無責任な感想であるととられてしまうかも知れませんが、現時点での、僕の素直な感想です。
 僕にとって、東京プライドパレードは、非常に大切なものです。だからこそ、LGBTのみんなが、気負わず参加できるものであって欲しい、そう願うだけです。救護ボランティアの面々とは、昨年のパレードで知り合って、今回ほぼ一年ぶりに再会するのに、非常に打ち解けた雰囲気で仕事が出来たし、毎年乱れ気味の打ち上げも本当に楽しかったです。一年のうちで、あそこまで肯定のシャワーを、祝福の感動を与えられる機会は他に無いし、ゲイで本当によかったと心の底から思える瞬間でもあります。
 一年分の元気をもらいました。来年もまた行きますよ、きっと。