イスラム教と同性愛

 前回、キリスト教における同性愛の扱いについて述べてきました。イスラム社会での同性愛というものは、キリスト教圏の比ではないレベルでタブー視されています。イスラム法に則った社会においては、同性愛者であるという理由だけで、死刑に処されることがあり、そのために難民まで発生しています。

 モーリタニアサウジアラビアパキスタンスーダンアフガニスタンイエメン共和国オマーンにおいては、刑法自体には同性愛者の処罰について明記されていないようですが、実際のところ、イスラム法の実践によって人々を死刑に処しているといいます。もっと積極的に、イスラム法に則って刑法を規定している国もあります。例えば、イラン・イスラム共和国においては、以下のように刑法を定めています。

第108条 ソドミーとは二名の男性で行われる性行為で、かつ性器の挿入を含むもののことを指す。
第109条 ソドミーが行われた場合、挿入者と被挿入者はともに処罰の対象となる。
第110条 ソドミーの処罰は死刑であり、執行の方法はイスラム法判事の指示に基づく。
第111条 挿入者と被挿入者がともに成人であり、健康な精神状態で自由意思によりソドミーが行われた場合、これを死刑に処す。
第121条 二名の男性間の挿入を伴わない性行為の場合、両者を100回のむち打ち刑とする。
第123条 二名の血縁関係にない男性が、不必要に全裸で横たわった場合、両者を99回のむち打ち刑とする。
第124条 性欲をもって同性とキスを行った場合、60回のむち打ち刑とする。

 また、女性間の同性愛についても規定があります。女性間の性行為は初犯が100回の鞭打ち、4回目で死刑となっています。その一方で、イランには性の変更に関する法律が存在しています。法律のみでなく、医療体制などもしっかりしています。こうして、心と体の性の不一致(トランスジェンダー)に関しては進んだ国とも言えるのですが、「同性愛は犯罪」という落とし穴があるため、性の変更に至る前に、同性愛行為によって処罰される可能性が高いのです。

 さて、イランの刑法の背景には、いわゆるシーア派法学というものが存在します。1990年5月に当時イラン最高裁長官であり、シーア派法学者の最高位の称号を持つムサヴィ・アルデビーリー師は、テヘラン大学の講演で、同性愛について次のような内容を述べています。「同性愛者に対しては、イスラムは最も厳しい処罰を科している。同性愛者を拘束し、立たせ、剣により、頭から二分するか斬首するかして体を二つに割くべきである。死亡した後は、火葬とするか、山頂から投げ落とすべきである。その後死体を集め、焼却すべきである。あるいは、穴を掘り、生きたまま焼却してもよい」さらに、その根拠として「7〜8世紀頃、シーア派の中軸的存在が、同性愛者の処罰について『殺害し、剣で斬首し、また、死体も処罰するため、丸太に結びつけ焼却せよ』と命じた」という逸話をとりあげたようです。

 現在進行形で、イスラム諸国で同性愛者への残虐刑が執行されており、その情報はネットでも容易に入手できます。現時点では、イスラムと同性愛は全く相容れないもののようです。