家族

 たいへんご無沙汰しております。 

 少し前には想定もしなかったような人生を送っています。

 全てのきっかけは肉親の死に帰結するような、そうでもないような。とにかく大学医局という枠組みの外に出たことで、それまで予定調和的に歩んでいた生活からは抜け出すことになり、ある意味での自由の中で、海外で働くことを選んだのです。しかし、任国の治安の悪化から、急遽退避することとなり、しばし先の見通しがたたないまま流浪の身となっていたものの、ようやく新しい任国に落ち着き、今に至っております。現在はアジア某国でそれなりに忙しい日々を送っています。

 仕事の場が日本の外へ移り、たまたまのめぐり合わせでそこを退避することになったり、今後もいろいろな国へ異動していく見込みであることを考えると、それはそれで変化のある生活であるとは言えます。しかしながら、その一方で、SNSなどを通して伝わってくる友人たちの、「人生の季節の移ろい」を見るにつけ、また改めてなんとも言えない寂しさと焦りというものが沸き上がってきて、頼るべき「家族」不在の将来に不安を感じはじめてもいるのです。

 血縁ということにはそれほどこだわりませんが、子どもの成長を見守ることができるような生活がしたいという気持ちが、周期的に沸き上がってくるのですが、容赦なく流れる時と刻まれる歳に、焦りのようなものが年々大きくなっています。もし本気で望めば、異性の配偶者を得ることができる、というタイムリミットが間近のような、もう過ぎてしまったような。

 まあ、自分の気持ちに嘘をついたり、相手に嘘をついてまで異性と結婚ということを望まないのですが、どうにかして、家庭と子どもを持つ生活を築けないか、とぐるぐる考えています。「結婚なんてするつもりはない」と言っていた友人や後輩たちも、気付けばあっさりと落ち着く所に落ち着いて、SNSに幸福な家庭の日常をアップしていたりするんですよね。

 数日前に一時帰国しました。日本の友人たちと年を越した後、少しだけ実家に帰ろうと思います。皆様もどうぞよいお年を。