あけましておめでとうございます

 あけましておめでとうございます。皆様いかがおすごしでしょうか。
 おそらく多くの医者たちは、僕と同様元日には仕事始め、当直病院を転々と、という状況かと思います。それでも、僕は今年、運良く年末に少しフリーな日があったので、久しぶりに少し帰省しました。帰省が楽しいというわけでもないのですけれど。
 どうやら僕も社会的には結婚適齢期と言われる年齢にいるので、やはり帰省すればそういう話題が出てくることもあります。両親にはカミングアウトしていないのです。僕はかなり先手をうって、自分の職業の忙しさ、引っ越しの多さ、海外留学の可能性などを理由に、まだ当分結婚する気はないし、必ずしも結婚が必要とも思わないので、結婚しない人生も考えている、というような内容を、やんわりと伝えています。無論、幸い生活も完全に自立しており、さらには実家に援助をしている状況です。そうして、強く結婚を迫るような話題は出しにくい土壌をつくっています。
 もっとも、単に結婚の話題が出やすいということだけが帰省が楽しくない理由ではありません。実家を遠ざける大きな理由に、父親との関係性があるのです。そして、これは家族にカミングアウトしていない、そして、今後もするつもりがないということを考えるに至る、大きな原因でもあるのです。意味深に書いていますが、言葉の裏にそれほど何かを隠しているわけでもありません。このあたりは、後日また語るかも知れません。「後日語る」ばっかりでしつこくてすみません。
 さて、現実問題として、自分の性的思考に正直に生きる結果、僕は異性間の結婚、子づくりは不可能です。本当は、結婚にも憧れているし、自分の子を育ててみたいと思っているのです。恋愛感情を廃絶すれば、擬似的に夫婦になったり、子供をつくることは可能でしょうが、これはいろいろなところにほころびをつくり、犠牲が大きな気がするので実行する気にはなれませんが。
 僕の好きな本に「ウィーツィ・バット」という一連のシリーズがあります。

ウィーツィ・バット―ウィーツィ・バットブックス〈1〉 (創元コンテンポラリ)

ウィーツィ・バット―ウィーツィ・バットブックス〈1〉 (創元コンテンポラリ)

この作品の中で、ゲイのカップルと女の子の奇妙な関係性について描かれています。この作品は大好きで、作中での、この関係性と出産はごく自然なことのように思え、理想的に感じてしまったりもするのですが、これはやはりファンタジーであって、そのまま現実社会に当てはめるのは難しいな、と思っています。実社会に、カミングアウトしたゲイと女性と子供という関係性を保っている例もあるようですけれど、これが完全に一般的なものかと言われると、そうではないとも思うのです。結婚・出産に関しては、自分の感情が相当混乱しているので、文章もとりとめがなくてすみません。
 さて、話題を戻します。もちろん、家族以外からも、結婚の話題を振られることがあります。たいていはうやむやにしてしまえばあきらめるのですが、中にはしつこい人がいます。彼女がいるのか、という問いに、正直にいないと答えても、勝手にいると設定した上であれこれこと細かくきいてくる人間は多いのです。家族という関係は、血縁者として逃れようがないので、こうした質問をかわすための土壌をつくっているのは前述の通りですが、そうでない知人との間ではなかなか難しいです。特に、カミングアウトした関係を築きたいと思えるような相手でなければ、もうその会話全てが鬱陶しくなるし、正直こうした話題が延々続いた時点で気分は最低、呑み会でこういった人に捕まると、もう早く帰ることしか考えられなくなります。得てして、カミングアウトしたいと思うような相手は、カミングアウト以前であっても、僕が嫌だというそぶりを見せれば、適度に引いてくれる人々でした。ある程度親しくしていてなお、なんとなくカミングアウトできないでいる人間の多くは、こういった、結婚・恋愛、あるいは男女間のエロ話がかなり好きでした。それでも、ある線のところで引いてくれれば耐えられますが、域値をこえ続ける人とは交友関係を保つのが難しいです。
 また、こういう直接の攻撃以外に、多数に向けたもっともらしい発言に傷つくことも多いです。僕はいいかげんなれてきましたが、まだ自覚がはっきりとしないような、未成熟なゲイに対してはそうとう鋭い刃です。宗教団体の「同性愛は罪」という説教だったり、自称教育者の「出生率が下がってるのなら、結婚できない男女を強制的に結婚させて子供を産ませろ」なんていう、同性愛者ばかりか、不妊その他で悩む方々をも強く侮辱するような、とてつもなく下品な主張とか。お笑いのホモネタとか、ゲイのおもちゃなんかとは次元の違うことなのです。以前にも述べているように、僕はそれほど「ホモネタ」などには思い入れはありません。むしろ、こういう一見して正義的な主張がやっかいだと思っていますがいかがでしょうか。
 もともとは新年の挨拶のつもりでした。今年もよろしくお願いします。メルマガもぼちぼち次号を発行します。今月半ばまでには。